ID コネクタを作成する

デフォルトでは、Google Cloud Search は Google Cloud Directory(ユーザーとグループ)に保存されている Google ID のみを認識します。ID コネクタは、企業の ID を Google Cloud Search で使用される Google ID と同期させるために使用されます。

Google は、ID コネクタを開発するための以下のオプションを提供しています。

  • Identity Connector SDK。このオプションは、Java プログラミング言語でプログラミングしているデベロッパー向けです。Identity Connector SDK は、コネクタをすばやく作成するための REST API を簡単に使えるようにしたラッパーです。この SDK で ID コネクタを作成する場合は、Identity Connector SDK を使用して ID コネクタを作成するをご覧ください。

  • 低レベル REST API と API ライブラリ。これらのオプションは、Java でプログラミングしていないデベロッパーや、コードベースが REST API やライブラリに問題なく対応できるデベロッパー向けです。REST API を使用して ID コネクタを作成する際、ユーザーのマッピングについては Directory API: ユーザー アカウントを、グループのマッピングについては Cloud Identity のドキュメントをご覧ください。

Identity Connector SDK を使用して ID コネクタを作成する

ID コネクタによって行われる標準的なタスクは、次のとおりです。

  1. コネクタを構成します。
  2. 企業 ID システムからすべてのユーザーを取得し、Google ID との同期のために Google に送信します。
  3. 企業 ID システムからすべてのグループを取得し、Google ID との同期のために Google に送信します。

依存関係を設定する

SDK を使用するには、ビルドファイルに特定の依存関係を含める必要があります。使用するビルド環境の依存関係を表示するには、以下のタブをクリックします。

Maven

<dependency>
<groupId>com.google.enterprise.cloudsearch</groupId>
<artifactId>google-cloudsearch-identity-connector-sdk</artifactId>
<version>v1-0.0.3</version>
</dependency>

Gradle

 compile group: 'com.google.enterprise.cloudsearch',
         name: 'google-cloudsearch-identity-connector-sdk',
         version: 'v1-0.0.3'

コネクタ構成を作成する

コネクタごとに対応する構成ファイルが存在し、コネクタはそこに含まれているパラメータ(お客様のリポジトリの ID など)を使用します。パラメータは、api.sourceId=1234567890abcdef などの Key-Value ペアとして定義されます。

Google Cloud Search SDK には、すべてのコネクタで使用される Google 提供構成パラメータが複数含まれています。以下の Google 提供パラメータをお客様の構成ファイル内で宣言してください。

  • コンテンツ コネクタの場合は、api.sourceIdapi.serviceAccountPrivateKeyFile を宣言する必要があります。これらのパラメータは、リポジトリと秘密鍵の場所を指定するもので、リポジトリにアクセスするのに必要です。
  • ID コネクタの場合は、api.identitySourceId を宣言する必要があります。このパラメータは、外部の ID ソースの場所を指定します。ユーザー間の同期を行う場合は、api.customerId も宣言してください。このパラメータは、お客様の会社の Google Workspace アカウントを識別する ID として使用されます。

上記以外の Google 提供パラメータについては、デフォルト値を特にオーバーライドしたくなければ構成ファイルで宣言する必要はありません。Google 提供の構成パラメータに関するその他の情報(ID や鍵を生成する方法など)については、Google 提供の構成パラメータをご覧ください。

独自のリポジトリ パラメータを定義して、お客様の構成ファイル内で使用することもできます。

構成ファイルをコネクタに渡す

構成ファイルをコネクタに渡すようにシステム プロパティ config を設定します。このプロパティは、コネクタを起動するとき -D 引数で設定できます。たとえば、次のコマンドは、MyConfig.properties 構成ファイルを使用してコネクタを起動します。

java -classpath myconnector.jar;... -Dconfig=MyConfig.properties MyConnector

この引数がないと、SDK はデフォルトの構成ファイル connector-config.properties にアクセスしようとします。

テンプレート クラスを使用して完全同期 ID コネクタを作成する

Identity Connector SDK には、ID リポジトリのすべてのユーザーとグループを Google ID と同期するための FullSyncIdentityConnector テンプレート クラスが含まれています。このセクションでは、FullSyncIdentityConnector テンプレートを使用して、Google 以外の ID リポジトリのユーザーとグループを完全に同期する方法について説明します。

このドキュメント セクションのコード スニペットは、IdentityConnecorSample.java サンプルからの抜粋です。このサンプルでは、2 つの CSV ファイルからユーザー ID とグループ ID を読み取り、Google ID と同期します。

コネクタのエントリ ポイントを実装する

コネクタのエントリ ポイントは main() メソッドです。このメソッドの主なタスクは、Application クラスのインスタンスを作成し、その start() メソッドを呼び出してコネクタを実行することです。

application.start() を呼び出す前に、IdentityApplication.Builder クラスを使用して FullSyncIdentityConnector テンプレートをインスタンス化します。FullSyncIdentityConnector は、実装するメソッドを含む Repository オブジェクトを受け入れます。次のコード スニペットは、main() メソッドの実装方法を示しています。

IdentityConnectorSample.java
/**
 * This sample connector uses the Cloud Search SDK template class for a full
 * sync connector. In the full sync case, the repository is responsible
 * for providing a snapshot of the complete identity mappings and
 * group rosters. This is then reconciled against the current set
 * of mappings and groups in Cloud Directory.
 *
 * @param args program command line arguments
 * @throws InterruptedException thrown if an abort is issued during initialization
 */
public static void main(String[] args) throws InterruptedException {
  Repository repository = new CsvRepository();
  IdentityConnector connector = new FullSyncIdentityConnector(repository);
  IdentityApplication application = new IdentityApplication.Builder(connector, args).build();
  application.start();
}

裏側では、コネクタの main() メソッドが Application.build を呼び出した後、SDK が initConfig() メソッドを呼び出します。initConfig() メソッドは、次のタスクを実行します。

  1. Configuation.isInitialized() メソッドを呼び出して、Configuration が初期化されていないことを確認します。
  2. Google 提供の Key-Value ペアで Configuration オブジェクトを初期化します。各 Key-Value ペアは、Configuration オブジェクト内の ConfigValue オブジェクトに保存されます。

Repository インターフェースを実装する

Repository オブジェクトの唯一の目的は、リポジトリ ID と Google ID を同期することです。テンプレートを使用する場合は、Repository インターフェースの一部のメソッドをオーバーライドするだけで ID コネクタを作成できます。FullTraversalConnector の場合は、次のメソッドをオーバーライドします。

  • init() メソッド。ID リポジトリを設定して初期化するには、init() メソッドをオーバーライドします。

  • listUsers() メソッド。ID リポジトリ内のすべてのユーザーを Google ユーザーと同期するには、listUsers() メソッドをオーバーライドします。

  • listGroups() メソッド。ID リポジトリ内のすべてのグループを Google グループと同期するには、listGroups() メソッドをオーバーライドします。

  • (省略可)close() メソッド。リポジトリをクリーンアップする必要がある場合は、close() メソッドをオーバーライドします。このメソッドは、コネクタのシャットダウン時に 1 回呼び出されます。

カスタム構成パラメータを取得する

コネクタを構成する過程で、Configuration オブジェクトからいずれかのカスタム パラメータを取得する必要があります。このタスクは通常、Repository クラスの init() メソッドで実行されます。

Configuration クラスには、構成から異なるデータ型を取得するメソッドがいくつかあります。各メソッドは ConfigValue オブジェクトを返します。その後、ConfigValue オブジェクトの get() メソッドを使用して実際の値を取得します。次のスニペットは、Configuration オブジェクトから userMappingCsvPath 値と groupMappingCsvPath 値を取得する方法を示しています。

IdentityConnectorSample.java
/**
 * Initializes the repository once the SDK is initialized.
 *
 * @param context Injected context, contains convenienve methods
 *                for building users & groups
 * @throws IOException if unable to initialize.
 */
@Override
public void init(RepositoryContext context) throws IOException {
  log.info("Initializing repository");
  this.context = context;
  userMappingCsvPath = Configuration.getString(
      "sample.usersFile", "users.csv").get().trim();
  groupMappingCsvPath = Configuration.getString(
      "sample.groupsFile", "groups.csv").get().trim();
}

複数の値を含むパラメータを取得して解析するには、Configuration クラスのいずれかの型パーサーを使用してデータを個別のチャンクに解析します。次のコード スニペット(チュートリアル コネクタからの抜粋)は、getMultiValue メソッドを使用して GitHub リポジトリの名前のリストを取得しています。

GithubRepository.java
ConfigValue<List<String>> repos = Configuration.getMultiValue(
    "github.repos",
    Collections.emptyList(),
    Configuration.STRING_PARSER);

すべてのユーザーのマッピングを取得する

listUsers() をオーバーライドして、ID リポジトリからすべてのユーザーのマッピングを取得します。listUsers() メソッドは、同期する最後の ID を表すチェックポイントを受け取ります。チェックポイントは、プロセスが中断された場合に同期を再開する目的で使用できます。リポジトリ内のユーザーごとに、listUsers() メソッド内で以下の手順を実行します。

  1. Google ID および関連する外部 ID からなるマッピングを取得します。
  2. ペアを listUsers() メソッドから返されるイテレータにパッケージ化します。

ユーザー マッピングを取得する

以下のコード スニペットは、CSV ファイルに保存されている ID マッピングを取得する方法を示しています。

IdentityConnectorSample.java
/**
 * Retrieves all user identity mappings for the identity source. For the
 * full sync connector, the repository must provide a complete snapshot
 * of the mappings. This is reconciled against the current mappings
 * in Cloud Directory. All identity mappings returned here are
 * set in Cloud Directory. Any previously mapped users that are omitted
 * are unmapped.
 *
 * The connector does not create new users. All users are assumed to
 * exist in Cloud Directory.
 *
 * @param checkpoint Saved state if paging over large result sets. Not used
 *                   for this sample.
 * @return Iterator of user identity mappings
 * @throws IOException if unable to read user identity mappings
 */
@Override
public CheckpointCloseableIterable<IdentityUser> listUsers(byte[] checkpoint)
    throws IOException {
  List<IdentityUser> users = new ArrayList<>();
  try (Reader in = new FileReader(userMappingCsvPath)) {
    // Read user mappings from CSV file
    CSVParser parser = CSVFormat.RFC4180
        .withIgnoreSurroundingSpaces()
        .withIgnoreEmptyLines()
        .withCommentMarker('#')
        .parse(in);
    for (CSVRecord record : parser.getRecords()) {
      // Each record is in form: "primary_email", "external_id"
      String primaryEmailAddress = record.get(0);
      String externalId = record.get(1);
      if (primaryEmailAddress.isEmpty() || externalId.isEmpty()) {
        // Skip any malformed mappings
        continue;
      }
      log.info(() -> String.format("Adding user %s/%s",
          primaryEmailAddress, externalId));

      // Add the identity mapping
      IdentityUser user = context.buildIdentityUser(
          primaryEmailAddress, externalId);
      users.add(user);
    }
  }
  // ...
}

イテレータにユーザー マッピングをパッケージ化する

listUsers() メソッドは、IdentityUser オブジェクトの Iterator(具体的には CheckpointCloseableIterable)を返します。CheckpointClosableIterableImpl.Builder クラスを使用すると、イテレータを構築して返すことができます。以下のコード スニペットは、各マッピングをリストにパッケージ化して、そのリストからイテレータを構築する方法を示しています。

IdentityConnectorSample.java
CheckpointCloseableIterable<IdentityUser> iterator =
  new CheckpointCloseableIterableImpl.Builder<IdentityUser>(users)
      .setHasMore(false)
      .setCheckpoint((byte[])null)
      .build();

グループを取得する

listGroups() をオーバーライドして、ID リポジトリからすべてのグループとそのメンバーを取得します。listGroups() メソッドは、同期する最後の ID を表すチェックポイントを受け取ります。チェックポイントは、プロセスが中断された場合に同期を再開する目的で使用できます。リポジトリ内のユーザーごとに、listGroups() メソッド内で以下の手順を実行します。

  1. グループとそのメンバーを取得します。
  2. 各グループとメンバーを listGroups() メソッドから返されるイテレータにパッケージ化します。

グループ ID を取得する

以下のコード スニペットは、CSV ファイルに保存されているグループとメンバーを取得する方法を示しています。

IdentityConnectorSample.java
/**
 * Retrieves all group rosters for the identity source. For the
 * full sync connector, the repository must provide a complete snapshot
 * of the rosters. This is reconciled against the current rosters
 * in Cloud Directory. All groups and members  returned here are
 * set in Cloud Directory. Any previously created groups or members
 * that are omitted are removed.
 *
 * @param checkpoint Saved state if paging over large result sets. Not used
 *                   for this sample.
 * @return Iterator of group rosters
 * @throws IOException if unable to read groups
 */    @Override
public CheckpointCloseableIterable<IdentityGroup> listGroups(byte[] checkpoint)
    throws IOException {
  List<IdentityGroup> groups = new ArrayList<>();
  try (Reader in = new FileReader(groupMappingCsvPath)) {
    // Read group rosters from CSV
    CSVParser parser = CSVFormat.RFC4180
        .withIgnoreSurroundingSpaces()
        .withIgnoreEmptyLines()
        .withCommentMarker('#')
        .parse(in);
    for (CSVRecord record : parser.getRecords()) {
      // Each record is in form: "group_id", "member"[, ..., "memberN"]
      String groupName = record.get(0);
      log.info(() -> String.format("Adding group %s", groupName));
      // Parse the remaining columns as group memberships
      Supplier<Set<Membership>> members = new MembershipsSupplier(record);
      IdentityGroup group = context.buildIdentityGroup(groupName, members);
      groups.add(group);
    }
  }
  // ...

}

グループとメンバーをイテレータにパッケージ化する

listGroups() メソッドは、IdentityGroup オブジェクトの Iterator(具体的には CheckpointCloseableIterable)を返します。CheckpointClosableIterableImpl.Builder クラスを使用すると、イテレータを構築して返すことができます。以下のコード スニペットは、各グループとメンバーをリストにパッケージ化して、そのリストからイテレータを構築する方法を示しています。

IdentityConnectorSample.java
CheckpointCloseableIterable<IdentityGroup> iterator =
   new CheckpointCloseableIterableImpl.Builder<IdentityGroup>(groups)
      .setHasMore(false)
      .setCheckpoint((byte[])null)
      .build();

次のステップ

必要に応じて次の手順を行います。