mROI 事前分布および ROI 事前分布との比較

mROI 事前分布は、有料メディア チャネルでの ROI 事前分布の代替手段となるものです。チャネルの mROI は、1 通貨単位の追加費用に見込まれる収益と定義されます。追加費用は、リーチを拡大することによって地域と期間に配分され、平均フリークエンシーは一定に保たれます。

ROI 事前分布と mROI 事前分布のどちらを選ぶかは、重要な意味を持ちます。特に、チャネル間で事前分布を均等に揃えることを目指す場合はなおさらです。ROI にも mROI にも事前分布があります。ROI 事前分布が指定されていれば mROI 事前分布が導出され、mROI 事前分布が指定されていれば ROI 事前分布が導出されます。導出された事前分布はパラメトリック ファミリーに属さず、通常は他のモデル パラメータと無関係ではありません。導出された事前分布の正確な分布は、さまざまな地域と期間で実施されるチャネルのメディア施策の配分に左右されます。重要なのは、すべてのチャネルで共通の ROI(mROI)事前分布が使われた場合でも、導出される mROI(ROI)事前分布はチャネルごとに異なるという点です。

Hill 関数の形状が凹形の場合(たとえば、傾斜パラメータが 1 の場合(デフォルトの前提条件))、リーチとフリークエンシー(R&F)のデータがないチャネルでは、全体的な ROI が mROI よりも常に高くなります。ROI 事前分布を使用すると、導出される mROI 事前分布は R&F 以外のチャネルに対して真に小さい値になります。逆に mROI 事前分布を使用すると、導出される ROI 事前分布は R&F 以外のチャネルに対して真に大きい値になります。

リーチとフリークエンシーのチャネルの場合、リーチによる mROI は ROI と等しくなります。これは、リーチによる mROI に mROI 事前分布が適用されるためです(通貨単位あたりの次回の支出によって、平均フリークエンシーが変わることなくリーチが拡大します)。メリディアン モデルの仕様において、メディア効果はリーチに対して線形です。したがって、ROI と mROI のどちらの事前分布のパラメータ化を選んでも、リーチとフリークエンシー チャネルの事前分布には影響しません。ただし、リーチとフリークエンシー チャネルの事後分布の推定には、ROI と mROI のどちらの事前分布のパラメータ化を選ぶかが影響します。その理由は次のとおりです。

  • 他のチャネルの事前分布の選択が、リーチとフリークエンシー チャネルのモデルの適合性と事後分布の結果に影響する。
  • ROI と mROI のデフォルトの事前分布が異なる。

特定のモデルで導出される事前分布を調べたい場合は、sample_prior を呼び出した後に、use_posterior=False 引数を指定して Analyzer クラスの roi メソッドか marginal_roi メソッドを呼び出すことで事前分布を取得できます。

ROI 事前分布を選択する利点:

  • すべてのチャネルで共通の ROI 事前分布を使用すると、事前分布の ROI を均等にすることができます。事前分布の強度が増す(標準偏差が減少する)につれて、ROI 事後分布が共通の値に向かって収束していきます。
  • チャネル固有の ROI 事前分布を使用すると、テスト結果などの事前知識を組み込めます。
  • ROI 事前分布では、mROI 事前分布ほどには最適化予算をうまく調整できませんが、最適化費用の制約を使うことで、特定のチャネルに提案される予算の調整額を制限できます。

mROI 事前分布を選択する利点:

  • すべてのチャネルで共通の mROI を使用すると、事前分布の mROI を均等にすることができます。事前分布の強度が増すにつれて、事後分布の mROI 値が共通の値に向かって収束していきます。
  • 事前分布の mROI が均等だと、一般的に最適化予算の調整幅が小さくなります。その理由は次のとおりです。
    • すべてのチャネルで同じ mROI 事前分布が使われると、事前の最適な予算配分が過去の予算配分と一致する。
    • 事前分布の強度が増すにつれて、事後分布の最適な予算配分が共通の値に向かって収束していく。
    • リーチとフリークエンシーのデータがあるチャネルで、強力な mROI 事前分布を使用しているにもかかわらず、そのチャネルの過去のフリークエンシーではなく最適なフリークエンシーも使用した場合は、最適化の費用が大幅に増える可能性があります。過去のフリークエンシーでの mROI には mROI 事前分布が適用されます。この mROI は常に、最適なフリークエンシーでの mROI よりも低くなります。予算の最適化はデフォルトでは最適なフリークエンシーで実施されますが、その最適化メソッドに含まれるブール値引数 use_optimal_freq を使用すれば、最適なフリークエンシーと過去のフリークエンシーのどちらで最適化を実施するかを指定できます。

留意すべきポイント: mROI は期間によって異なるため、最適化の期間が mROI 事前分布の期間と一致しない場合は、mROI 事前分布によって最適化予算の調整が意図したとおりに正規化されない可能性があります。最適化の期間は、BudgetOptimizer.optimize()selected_time 引数を使用して調整できます。mROI 事前分布の期間は、ModelSpecroi_calibration_period 引数と rf_roi_calibration_period 引数を使用して調整できます。デフォルトでは、どちらの期間もモデリングの全期間に設定されます。